近年、確定申告や年末調整の電子化が進み、e私書箱を使った証明書の受け取りが一般的になってきました。その一方で、企業の担当者や行政機関のご担当者から、次のような声をよく耳にします。

  • 「e私書箱で送る文書に、電子署名やeシールは必要ですか?」
  • 「法律で義務付けられているのでしょうか?」
  • 「付けたほうが良い理由が知りたいです。」
  • 「どこまでe私書箱側が面倒を見てくれるのか不安です。」
     

これらの疑問は、e私書箱と電子署名/eシールの「役割の違い」を整理すると、非常にシンプルに理解できます。
そこで本記事では、e私書箱 × 電子署名/eシールの関係をやさしく・正しく・実務に役立つ視点で解説します。

そもそもe私書箱とは?

まずは、e私書箱の役割を整理しましょう。

e私書箱とは、企業・金融機関・行政などが発行する証明書を、個人が安全に受け取れる仕組みです。
例えば、以下のような証明書の電子交付に利用されています。

  • ・保険料控除証明書
  • ・住宅ローン残高証明書
  • ・信託/証券の年間取引報告書
  • ・各種自治体からの通知
     

マイナンバーカードを用いた本人認証と組み合わせることで、「確実に本人に届ける」 という点で非常に強いプラットフォームになっています。

e私書箱で誤解されやすい重要なポイント

しかし、ここが最も誤解されやすいところなのですが、e私書箱は「文書の真正性(改ざんがない/誰が発行したか)」を保証するサービスではありません。役割を分解すると、次のようになります。

  • ■e私書箱
    → 文書を安全に“届ける”仕組み
  • ■文書の真正性
    → 発行者側(企業・行政)が担保する領域
     

つまり、以下の構造が見えてきます。

  • e私書箱は「配送の信頼」を提供する
  • 文書そのものの「内容の信頼」は、発行者側の責任
     

この前提を理解すると、「文書の信頼性はどうやって担保するのか?」という問いが自然に出てきます。

電子署名/eシールは義務なのか?付与する理由とは

結論としては、電子署名/eシールは “法律上の義務” ではありません。また、e私書箱が仕様として強制しているわけでもありません。つまり、「電子署名/eシールを付けないと、アップロードできない」ということはなく、「法律で必須」ではない、という点は明確です。

ではなぜ、多くの組織が電子署名/eシールを付けて e私書箱に文書をアップロードしているのでしょうか?
理由は主に3つあります。

①e私書箱は文書の真正性を保証しないから

文書が受取箱に届いたとしても、「本当に企業が発行した文書なのか?」「改ざんされていないか?」という点は e私書箱側が保証しない仕組みになっています。そこで、発行者側が「真正性の証明」として、電子署名(個人)/電子シール(法人)を付与することで、文書自体の信頼性を高めることができます。

②e私書箱で扱われる文書は証明書が多いから

e私書箱では、多くの場合「証明書」の電子交付が行われます。年末調整、確定申告、公的手続き、金融取引など、提出先に信頼性が求められる性質の文書ばかりです。そのため、企業の正式な発行物であること、また、改ざんされていないことを示す手段として、電子署名やeシールが選ばれるのは自然な流れと言えます。

③受取側(個人)にとっても安心材料になるから

個人にとっても、「どこの誰が発行した文書かわかる・改ざんされていない」と確認できるのは安心です。特に金融系や税務系の書類は、誤りや欠損があると大きな影響が出るため、信頼性を可視化できることは大きなメリットです。

e私書箱での電子署名/eシールの活用事例

では、実際にはどのようにe私書箱で電子署名/eシールを活用するのでしょうか。そこで、GMOグローバルサインのお客さまである某組織の活用事例をご紹介します。

eシールアプリでeシールを付与してe私書箱へアップロード

この組織では、利用者向けの各種証明書をe私書箱を使って電子的に発送していますが、アップロード前に「eシールアプリ」で法人の電子シールを付与してから登録する、という運用を行っています。この組織がeシールを選んだ理由は以下のとおりです。

  •  ・利用者に対して「公式に発行した文書」であることを明示したい
     ・書類が途中で改ざんされていないことを担保したい
     ・e私書箱は真正性を保証しないため、発行者として責任を果たしたい
     

ここで重要なのは、eシールの利用は義務ではなく、組織自身が“より適切で安心できる運用”として選んでいるという点です。
これは、e私書箱の特性と電子シールの役割を理解した非常に合理的なアプローチと言えます。

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まとめ

最後にまとめとして、本記事のポイントを整理します。

  •  ①e私書箱は、文書を安全に届けるための仕組み
     ②文書の真正性は、発行者側が担保する領域
     ③電子署名・eシールは必須ではないが、証明書を扱う場面では非常に相性がよい
     ④「届ける信頼」と「文書そのものの信頼」を組み合わせることで、電子交付はより安心なものになる
     

電子文書の世界では、「届ける信頼」と「文書そのものの信頼」 は別のレイヤーで成り立っています。e私書箱 × 電子署名/eシールは、その二つをバランスよく補完する、とても合理的な組み合わせだと言えるでしょう。

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この記事を書きました

伊藤 健太郎

伊藤 健太郎
所属:GMOグローバルサイン 事業企画部