
2024年度に制度化が進んだ「eシール認定制度」は、組織名義での電子署名の信頼性と真正性を担保する仕組みとして注目を集めています。GMOグローバルサインでは、国内外の最新動向に対応するべく、レベル1・レベル2のeシール関連商材やEU適格eシール(QSealC)など、さまざまなソリューションを展開中です。本記事では、eシール制度の概要とレベル分類、弊社の提供商材、今後の展望や国際対応についてわかりやすく解説します。
eシール制度創設の背景とレベル分類
2023年度、総務省により「eシールに係る検討会」が開催され、その成果として「eシールに係る検討会最終取りまとめ」が公表されました。翌2024年度には、総務大臣によるeシール認定制度の創設に向けて、「eシールに係る関係規程策定のための有識者会議」が設置されました。その結果、「eシールに係る認定制度の関係規程策定のための有識者会議取りまとめ」が公表され「eシールに係る認証業務の認定に関する規程」が策定されました。これにより、日本におけるeシールの基本的な枠組みが制度として明示されました。
この制度においては、eシール用認定制度を取得した認証局(CA)から発行される証明書を「レベル2」、それ以外を「レベル1」として定義しています。
GMOグローバルサインの商材対応状況
GMOグローバルサインも電子証明書の発行事業者として、この制度分類に基づく商材の整備を進めており、現時点で提供可能なeシール関連商材を以下にまとめました。
商材一覧
レベル1 | レベル2 | EU適格eシール | |
---|---|---|---|
GlobalSign提供商材 | 文書署名用証明書 電子印鑑ソリューションDSS byGMO eシールアプリ byGMO |
認定eシール(提供予定)※1 | Qualified certificates for electronic seals (QSealC) |
Adobe Acrobat Readerでの検証 |
可能 | 一部制限あり※2 | 可能 |
認定制度 | AATL認定 | eシールに係る認証業務認定(取得検討中) | EU eIDAS規則準拠 |
鍵保管の規定 | あり(HSM/USBトークン等) | 特に規定なし | あり(HSM/USBトークン等) |
有効期間 | 最長3年 | 最長5年 | 最長3年 |
※1:2025年6月10日時点では、レベル2の総務大臣認定を受けた事業者は存在していません(弊社含む)。
※2:「AATL認定」および「eシールに係わる認証業務認定」の双方取得することで、Adobe上で警告表示なく検証可能です。
AATL認定を取得しているレベル1商材およびEU eIDAS準拠のQSealCについては、Adobe Acrobat Readerにおいてデフォルトでの検証が可能です。一方、レベル2の商材では、PDFを開いた際に警告が表示されるケースがあるため、個別の設定や専用の検証環境の整備が必要になる可能性があります。
レベル1のeシールは、取得必須の認定制度が存在せず、eシールの定義を満たすことで提供が可能です。そのため、弊社では主にAATL証明書を用いた文書署名ソリューションを提供しています。
また、弊社はEU圏ではすでに、eIDAS規則に基づく適格トラストサービスプロバイダー(QTSP)としても認定されており、QSealC(Qualified electronic seals)の発行にも対応しています。
一方、レベル2のeシールに関しては、「eシールに係る認証業務の認定に関する実施要項(令和7年4月24日版)」第7条3項に、署名鍵の取り扱いや送付に関する詳細が定められています。
三 利用者eシール符号を認証事業者が作成する場合においては、当該利用者eシール符号を安全かつ確実に利用者等に渡すことができる方法により交付し、又は送付し、かつ、当該利用者eシール符号及びその複製を直ちに消去すること。
三の二 利用者eシール符号を利用者等が作成する場合において、当該利用者eシール符号に対応する利用者eシール検証符号を認証事業者が電気通信回線を通じて受信する方法によるときは、あらかじめ、利用者識別符号を安全かつ確実に当該利用者に渡すことができる方法により交付し、又は送付し、かつ、当該利用者の識別に用いるまでの間、当該利用者等以外の者が知り得ないようにすること。
引用:「eシールに係る認証業務の認定に関する実施要項(令和7年4月24日時点版)」
これにより、認証局が署名鍵を直接リモート署名サービスへ送付することはできず、必ず一度、利用者を介する必要があると読み取れます。
また、制度上、リモート署名の使用を禁止する規定は存在せず、利用者が自ら鍵をアップロードする場合や利用者がリモート署名サービス事業者へ送付することに限り、リモート署名サービスの活用は可能と解釈されます。ただし、サービス事業者側の対応や利用者の手間を考慮すると、今後、より利便性の高い実装と制度整備が求められるでしょう。
まとめ:今後の展望と国際通用性への対応
eシールは、大量の電子文書や取引情報に対し自動で署名する場面での利用が見込まれ、リモート署名との連携が今後さらに重要性を増すと考えられます。制度的な整備が進むことで、よりシームレスな運用が期待されます。
また、現在の制度は国内利用を中心としていますが、今後の課題として、国際相互承認を視野に入れた整備が求められます。特にEUとの適合性(例:QSealCの活用)を通じて、日本のeシールがグローバルに通用する仕組みの実現が期待されます。
加えて、認定eシールの普及に向けては、検証環境の整備や周辺技術の標準化も重要な論点となるでしょう。なお、国内利用においては、認定eシールの本格普及まで一定の時間を要することから、当面はレベル1(AATL証明書)による対応でも大きな問題は生じないと考えられます。
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