マイナンバー制度とは

マイナンバー(個人番号)が記載された通知カードの交付が2015年10月に開始され、マイナンバー制度はメディア等でも大きく取り上げられ、非常に注目を浴びているにもかかわらず、正しく理解されていないように感じています。マイナンバーと呼ばれる番号そのものは、全国民に振られた12桁の番号のことを指します。この12桁の番号は、年金や納税など行政において個人を識別するために用いられます。一般の企業では、マイナンバーを源泉徴収と紐づけるために全従業員から収集、保管し、納税と合わせて報告する必要があります。マイナンバーは個人情報と定義されており、定められた目的以外で第三者が取得、漏洩すると罰則の対象となります。

2016年1月からは、マイナンバーが記載されたマイナンバーカードの交付が開始されました。郵送で受け取った通知カードに必要な情報を記載し郵送、またはスマートフォンを使って申請することで、マイナンバーカードを受け取ることができます。このマイナンバーカードの表面には顔写真と名前、生年月日、住所、性別の基本4情報と呼ばれる、個人を識別するための情報が記載され、裏面には12桁のマイナンバーが印字されています。今後、法律の整備が進むにつれ、マイナンバーカードは免許証やパスポートなどと同様に身分証明書の一つとして利用可能になるでしょう。

さらに、カード内にはICチップが内蔵されており、券面のデータなどの他に、電子証明書が格納されていて、電子証明書には前述した基本4情報(氏名、性別、生年月日、住所)が格納されています。マイナンバー制度の設計は、住民基本台帳ネットワークシステムを元にしていると思われ、カードの情報もとても似通っています。

マイナンバー制度で利用されるマイナンバーカードと住民基本台帳カードが大きく異なる点は、住民基本台帳カードに格納されていた電子証明書の利用が行政機関など特定の機関にのみ許されていました。しかし、マイナンバーカードに格納される電子証明書は、一定の条件を満たし総務大臣の認定を取得すれば、民間の事業者でも活用が可能となっているという点が異なります。

マイナンバーカードの様式について

出典:総務省ホームページ
URL : http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/03.html

マイナンバーとマイナンバーカード

今一度、マイナンバーとマイナンバーカードを整理してみましょう。

マイナンバー(12桁の番号)は、行政機関など限られた機関のみが使用し、番号そのものからは誰の番号かを識別することは基本的にできません。マイナンバー制度でよく言われている民間活用とはマイナンバーカードの活用の事を指しています。マイナンバーカードのICチップに格納される電子証明書には基本4情報が含まれており、持ち主を特定する情報を電子的に受け取ることができます。ここで、正しく理解しなければならないのは「電子証明書にはマイナンバー(12桁の番号)は含まれない」ということです。電子証明書を読み取って持ち主を電子的に確認する場面であっても、本人のマイナンバー(12桁の番号)が流通することはありません。

マイナンバーカードの民間活用

マイナンバーカードの民間活用について考えるにあたり、ここではカードに格納される電子証明書に絞って考えてみましょう。

この電子証明書を取り扱う組織は、総務大臣の認定を受ける必要があります。総務大臣の認定を取得するには、定められたセキュリティ要件や内部統制の基準をクリアすることが必要となり、定期的な監査も実施されるものと考えられるので、民間活用には一定の制限があり厳格な運用が求められるが、民間活用が実質的に許されなかった住民基本台帳ネットワークシステムと比較すると大きな進歩といえます。

オンライン本人確認

現在、犯罪収益移転防止法で特定事業者と規定されている事業者、例えば金融機関等は、サービスを提供する際に厳格な本人確認が必要とされています。実際、オンライン証券口座の開設を行うためには、本人確認のために運転免許証の両面の写真を撮り、その画像をアップロードまたは郵送し、さらに証券会社からの郵送物を、運転免許証記載の住所で受け取ることで住まいの確認を完了しなければサービスの利用を開始できないケースが多いです。この場合、サービスを提供する側の証券会社では画像データと申し込み内容を確認する人員を配置し、さらに郵送の手配が必要なため、大きな運用コストが必要となっています。また、ユーザにとっては、郵送等による住まいの確認が完了するまでサービスの利用が開始できないのが現状です。

このような、本人確認をマイナンバーカードに格納されている電子証明書を利用して実施するとなると、マイナンバーカードをカードリーダにかざし、PINコードを入力するだけで、本人であることと住所が同時に確認できます。マイナンバーカードによるオンライン本人確認がシステム的にも法的にも可能になるとコストダウン、スピードアップの面で事業者、ユーザ共に大きなメリットになります。

ただ、前述したように、マイナンバーカードに格納されている電子証明書を活用するためには、総務大臣の認定を取得する必要があります。総務省が公表している認定取得のための要件は、一般の企業にとっては、セキュリティ面等でハードルが高いと思われます。

そこで、総務省が公開している「公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン」の中で、プラットフォーム事業者と定義されている事業者の登場です。プラットフォーム事業者は、総務省(正確には地方公共団体情報システム機構)のシステムとマイナンバーカードの電子証明書の取り扱いを希望する企業との間に立ち、実際の電子証明書の取り扱いを行う事業者の事です。プラットフォーム事業者が、総務大臣の認定を受け、ユーザが提示した電子証明書の中身を企業の代わりに読み取り、企業に電子証明書内の情報を送信します。企業は、電子証明書を直接取り扱う必要がなくなるため総務大臣の認定を取得する必要がありません。

今後、マイナンバー制度が広がるにつれて、弊社をはじめ数社のプラットフォーム事業者が事業を始めることになると思われます。各企業は、プラットフォーム事業者をうまく利用することで、大きなシステムコストを発生させることなく、マイナンバー制度を利用したオンライン本人確認で業務コストの圧縮、効率化が可能になると思われます。

ill_mnn01.png

マイナンバーカード普及のための課題

マイナンバーが全国民に強制的に附番されるのとは異なり、マイナンバーカードの取得は任意になっています。住基カードの普及が進まなかった反省を踏まえ政府は取得手数料を無しにするなどの施策を打っていますが、どの程度の国民が取得するかについては未知数です。

2017年にはマイナポータル(情報提供等記録開示システム)が開設されます。
マイナポータルとは、行政機関が自分の情報をいつ、どことやりとりしたのか確認できるほか、行政機関が保有する自分に関する情報や行政機関から自分に対しての必要なお知らせ情報等を自宅のパソコン等から確認するための方法として準備を進めています。このマイナポータルにログインするためには、マイナンバーカードが必要になっており、この頃になると多くの国民がマイナンバーカードを取得すると思われますが課題もまだまだあります。例えば、カードリーダーですが、マイナンバーカードを利用するためにはマイナンバー制度に対応したカードリーダーを用意する必要があります。住基カードの際のようにコンビニ各社が設置する端末での読み取りも可能になると思われますが、自宅でマイナンバーカードを利用したオンライン本人確認を行うにはやはりカードリーダーが必要です。
今後、各社が対応製品を発売することで価格も下がると思われますが、マイナンバーカード普及における最初のハードルになると考えられます。

次に、やはり重要なのがコンテンツです。「マイナンバーカードを使うことで何が便利になるのか」ということですが、これは、住基カードと異なり、マイナンバーカードの民間活用が許されていることで多くの利用方法の提案が期待できます。我々、プラットフォーム事業者も政府と企業のシステム上の橋渡し役となることで、多くのユニークで便利なアイデアが実現できることを強く望んでいます。

マイナンバー制度は個人情報の漏洩につながる等のマイナス面を心配する声も多く聞こえますが、プラス面もとても多いと考えられます。弊社としては、マイナンバー制度がセキュアで便利に利用され、公平・公正な世界の実現が近づくことを期待しています。

トピック関連記事

#

2016年02月01日

マイナンバーをデータで管理しよう!これからの情報管理の方法とは

#

2024年09月17日

マッチングアプリ・サービスにおける本人確認の重要性とeKYCの役割

#

2019年12月10日

オンライン本人確認eKYCとは?導入メリットと今後の展望

この記事を書きました

中條 勝夫

中條 勝夫
所属:GMOグローバルサイン ゼネラルマネージャー