電子契約は近年急速に実用段階を迎えています。電子署名が署名や押印と法的に同等であることを明記した電子署名法や、会計情報を電子データとして保存することを認めた電子帳簿保存法など、実用化にあたっての法的準備が整いました。技術的にも、電子署名やタイムスタンプなどが実用化され、契約処理のスピードアップとコスト削減を図りたいという企業ニーズに応えられる環境が整ってきています。

この記事では、まず既に電子契約を導入している企業の成功事例を検討します。そして、導入企業、取引先の電子契約導入メリットと課題点を整理します。

電子契約サービス導入で成功した企業の事例

各企業の電子契約サービス導入の背景と導入後のメリットを概観し、電子契約サービスの現状を見てみましょう。

大手百貨店事例
契約状況の見える化実現 コスト削減に成功・書類ミスの撲滅成功

大手コンビニチェーン事例  業務効率化成功・契約関連業務削減成功

大手不動産会社事例  契約関連業務削減成功・顧客満足度向上・契約件数増加

以上、電子契約サービスの導入に成功した企業の事例でした。

大手百貨店の例では電子契約の導入で、毎年発生することが確定していた全国の店舗改修業務の効率化を果たしています。コンビニチェーンの例では、店舗拡大戦略で一気に激増した工事契約処理対応に電子契約導入が大きな力を発揮しました。大手不動産会社の例では電子契約を活かしたシステムによって、業務効率化だけでなく、顧客満足や契約拡大など営業的なメリットを実現しています。

電子契約のさまざまなメリットを確認しよう!

電子契約の導入のメリットとして次の3点があげられます。

1. 契約コスト削減

紙による契約書の締結では「契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下のもの○○○円」などのように、契約金額によって印紙税を収めることが義務付けられています。収入印紙が必要な文書は契約書の他に領収証など20種類に及びます。また相手先に契約書を送るのに、封筒代や切手代などの経費がかかります。

電子契約の場合にはこの印紙税そのものが不要になり、送付にかかわるコストも大きく削減できます。

2. 契約関連業務削減

紙による契約書の締結では、契約書や注文書を作成するためのデータ入力・作成作業、押印、印紙購入・貼り付けなどの処理に膨大な時間がかかります。また、契約を締結した後でも文書のファイリング、保管スペースの確保、税務処理対応時の閲覧などに手間がかかります。

電子契約の場合には、取引先への送付はインターネット、書類作成はパソコン上で完結、ファイリングスペースの確保も必要なく、チェック体制も簡素化できます。自社に大きなメリットが生じるだけでなく、取引先でも契約書締結業務コストの大幅な削減が可能であり、契約ミスの発生も大幅に抑えることが可能です。

3. コンプライアンスの強化

紙による契約書の締結では、悪意のあるものが契約書を偽造した場合、法的に無効であることを証明するためには多大な労力がかかります。

電子契約で電子署名をすると、いつ、誰が署名をしたかが分かります。もちろん署名をする権限のない人のパソコンからは署名自体ができません。いつ署名がなされたかについては、公的機関によるタイムスタンプの証明がなされますので、パソコンの時刻をいじった上で署名しようとしても、作為的に時刻をずらしたことが明らかになってしまいます。またタイムスタンプが刻印された時刻以降に、本人以外の者が文書を不正に改ざんしていないかどうかも証明することが可能です。コンプライアンス強化は、取引先の自社に対する信頼感の向上にも役立ちます。

以上が代表的なメリットです。

「確かに便利そうだけど、こうした便利な電子契約システムを導入するには膨大な費用がかかってしまうのではないか?」という点が気になってきた方もいると思います。 電子契約システムの中にはイニシャルコストがかからないサービスもあります。そうしたサービスの場合、自社の導入費用だけでなく、相手先企業様にもコストを負担してもらうことなくスタートできます。

電子契約のデメリットと導入の課題点を確認しておこう!

電子契約のメリット 契約コスト削減 契約関連業務削減 コンプライアンスの強化 いいことずくめに見える電子契約ですが、デメリット、課題点もしっかり認識しておくことが大切です。課題点をクリアする方法を確認すれば、導入成功への道筋が見えてきます。

1.取引先にも電子契約サービス加入が必要

契約書の締結はもちろん相手先が合って始めて成立することですから、電子契約への移行についても相手先企業の電子契約サービスへの対応が必要となってきます。導入にあたっての費用がかからないサービスもありますが、相手先企業様の契約書締結の業務フローの変更は必要になってきます。

導入にあたっての費用はかからないことなどや、導入以後のメリットが導入にあたってのデメリットを上回ることを分かりやすく説明して、対応をお願いすることが課題です。

2.電子証明書の取得が必要

電子証明書はインターネット上の身分証明書のようなもので、電子契約サービスを利用するにあたって必須となります。電子証明書の発行の対象は法人ではなく、従業員や役員などの個人になります。契約書はもともと会社に所属する個人が会社のために契約を行い、契約書に署名した責任の所在は個人にあるためです。

申請にあたっては、申請者本人に適切な説明を行って申請の同意を得るなどの手続きが必要となります。

3.税務署に対応できる電子契約書運用管理体制が必要

電子契約を導入した後の税務調査に対しては、電子帳簿保存法で定められた運用をする必要があります。電子契約導入にあたっては、その運用管理体制を整備する必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。すでに実用段階に達している電子契約システムの現状をざっと見てみました。

現状多くの企業ではオンラインショッピング、EDI ※(電子データ交換)取引などにおける買い物(売買契約)は、ID / PW のみでログインして売買契約行為を行っています。取引金額と利便性の兼ね合いもありますが、電子署名などのより強固な本人確認・取引合意確認の方法が普及していくことで、今後はセキュリティ強化の動きが強まっていくことが予想されます。

こうした動きを見据えつつ、取引先と課題点をしっかり共有しながら、電子契約サービス導入検討を開始してみてはいかがでしょうか。

※EDIとはElectronic Data Interchangeの頭文字をとった略称です。電子データ交換と呼ばれ標準化された規約をもとにビジネス文書を電子化し、通信回線を通してやり取り、受発注を行うこと。

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グローバルサインカレッジ編集部
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